吹き抜ける風

絵のエピソード
テンペラ  120×110mm  sold
私の家は住宅地にあるのですが、10分ほど歩けば、田んぼが広がっています。
四季の美しさといえば、田んぼもそうですね。
春は蓮華が咲いてピンクになり、
初夏は水が張られて、赤ちゃんの毛みたいな苗が植えられて
夏はぐんぐんのびた青々とした景色。
秋は金色に光る景色。
冬はゴツゴツした土に霜が降り‥
 
田んぼの近くには川があって、白鷺がよく飛んでます。
稲の緑が風に吹かれると、
絨毯を手でさーっとなぞったみたいに色が変わります。
そこに白鷺がいて、とても美しかったのでこの絵を描きました。
散歩中、こういう鳥に会うと、なんか得した気分になります。
 
この絵に使用したテンペラという技法は、
粉の顔料と水、卵黄を混ぜて絵の具にします。
油絵の具が世に出る以前、中世の宗教絵画、壁画等に使われていました。
↑テンペラ技法を使った、有名なボッティチェリのヴィーナスの誕生。
私のテンペラは自己流ですが、一度、伝統的なテンペラ技法の講座に行った時
この絵の一部を模写しました。
びっくりしたのは、肌の色を初めに緑色に塗るように言われたこと。
まるで緑色の顔した妖怪。
そこに細い筆で線を描くように、陰影つけながら白っぽい肌を塗っていく
という気が遠くなる作業でした。
「ヴィーナスの誕生」のサイズは、縦172.5cm、横278.5cm
あの細かすぎる作業で、この大きさの絵を描いたボッティチェリ。
本当にすごいです!
 
 
テンペラは描くまでの準備は絵の具から作るとか下地作りとか、
若干手間がかかるのですが、
描き始めると乾くのは速くて、作業はサクサク進みます。
油絵のしっとり熱量のある画材より、
テンペラのドライで薄い膜のような質感やレトロ感もあって、
個人的には好きです。
卵黄に酢を入れるので、部屋は結構匂いがツラいですが
それを我慢してでも魅力的な画材です。
 
廃材を使ったフレームに合わせました